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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)736号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人森岡二三の上告理由について。

論旨は、借地法七条によれば残存期間を超えて存続すべき建物の築造に対する土地所有者の異議は、理由を必要としないので、本件(一)(三)の土地については上告人の異議によりその地上権は、延長された期間の終了時である昭和三一年九月一五日限り消滅したのにかかわらず、原審が借地法六条二項に準用される四条一項但書の正当の事由がないとして上告人の主張を排斥したことは、審理不尽であり判決に理由を付さない違法があると主張する。

しかし、原判決は、本件(一)及び(三)の各土地については、罹災都市借地借家臨時処理法一一条の適用により、右土地を目的とする地上権は昭和三一年九月一五日まで延長され、右各土地の換地予定地の上には被上告人において昭和二九年四月以降非堅固建物を建築所有していたので地上権消滅時たる同三一年九月一五日以後も右換地予定地の使用を継続したものであるところ、上告人のなした異議が借地法六条二項に準用される四条一項但書の正当事由を伴うものであることは首肯し得られないので、右異議はその効力を生じないと判示したものであつて、右判断は正当として是認することができる。けだし罹災都市借地借家臨時処理法一一条は、一面において罹災又は疎開によつて建物を失つた残存期間の短かい借地権者の借地権の存続を確保して借地権者の地位を安定し、他面において建物築造を促して建物復興に協力させることを目的としたものなので、本件のように借地権者が同条の期間内に建物を築造所有し、これにより右期間満了後も土地の使用を継続する場合には借地法六条を適用すべく、同法七条の適用はこれを排除した趣旨と解すべきであるからである。それ故、本件の場合に借地法七条の適用あることを前提とする所論は採用しがたく、原判決には所論の違法はない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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